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注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)の特徴

2020.9.3

投稿者:管理者

ADHDとは

ADHDは、不注意、多動性、衝動性を特徴とする神経発達症です。これらの特徴が年齢不相応に強く現れて、就学や就労、日常社会生活の適応が難しくなっている場合に診断されます。症状は子どもの頃から見られ、現在の診断基準(DSM-5)では、遅くとも12歳までに現れるとされています。

原因については、他の神経発達症と同様に、生来的な脳機能の偏りがあり、遺伝的素因と環境要因の両方が複雑に影響していると考えられています。現在、子どもの5%程度、成人の2.5%程度がADHDと診断されています。診断されている人は男性の方が多いです。

子どもの頃にADHDの症状や特性のために適応がうまくいかなかった場合、非行などの問題行動や学業の遅れ、メンタルヘルスの問題が起こりやすいことがわかっています。そのため、早期に症状や特性を把握し、それらを考慮した適切な対応をとることが大切です。

 

 

ADHDの症状

症状は、以下のような行動特徴として現れます。同じ人に全ての特徴がみられるとは限りません。不注意が目立つ人と、多動性・衝動性が目立つ人、両方とも目立つ人がいます。

 

「不注意」症状

幼児期・学童期によく見られる行動特徴

    • 集中し続けることができない
    • 忘れ物が多い、整理整頓が苦手
    • ケアレスミスが多い
    • 話しかけられても、聞こえていないように見える
    • 雑音やテレビなど、関係のない刺激に気がそれやすい
    • 興味があることをしているときに、それ以外のことが目に入らない(過集中)

青年期以降によく見られる行動特徴(学童期と同様のものは除く)

    • 集中が必要な作業を避ける
    • 鍵や財布、仕事の資料など,大切なものを失くす
    • 時間を見通すことが苦手で、約束や締め切りに遅れる

 

 

「多動性」「衝動性」症状

幼児期・学童期によく見られる行動特徴

    • じっとしていられない,着席していてもからだの一部が動く
    • 高いところや不安定な場所に登ろうとする
    • よくしゃべる
    • 軽はずみな行動が多い
    • 順番が待てない
    • 反抗しているつもりはないが、ルールから逸脱する

青年期以降によく見られる行動特徴(見た目には落ち着いていく傾向)

    • じっとしていると落ち着かない、じっとしなければいけない状況を避ける
    • 他の人がしていることに口出ししたり、自分がやってしまう
    • 感情的になりやすく、トラブルになる

 

症状の現れ方と変化

症状の強さや現れ方は、成長・発達に伴って、また、生活環境などの要因の影響を受けて変化します。不注意や多動性・衝動性は幼い頃には誰にでもあり、発達の中で徐々にコントロールできるようになります。ADHDを持つ人の中にも、発達の過程で診断基準を満たさなくなる人、症状があっても自分なりのやり方でうまく対処できるようになる人がいます。しかし、そのような場合でも、ADHDの特性を目立たない形で持ち続けていて、一つひとつの作業に人一倍の努力を要していたり、依然として適応に困難を感じていることが多いようです。

 

 

自閉スペクトラム症(ASD)との関係

同じ人が両方の症状・特性を持つことも、珍しいことではありません。一方で、どちらかの症状をもう一方のものと誤解されることもよくあります。例えば、ADHDの不注意や衝動性のために人間関係がうまくいっていない場合、ASDの社会的コミュニケーションの障害のように見えることがあります。反対に、ASDの症状が原因になって、結果的に多動や衝動的な行動が生じていることもあります。ASDとADHDを鑑別することは、そのときの症状や行動特徴をみるだけでは難しい場合があります。

 

 

お悩みの方へ

適切な対応や支援のためには、現在みられている行動特徴だけでなく、幼少期からの発達に関する情報と、本人を取り巻く環境に関する情報、必要に応じて心理検査の結果などを合わせて検討し、一人ひとりの全体像を総合的に捉えることが大切です。神経発達症に関するお悩みがある場合は、お住いの市区町村の子育て相談窓口や、かかりつけの小児科、発達相談をおこなっている病院や発達症の専門外来などで相談できます。

 

 

参考図書

ADHDの診断・治療指針に関する研究会、齊藤万比古(編著)(2016)注意欠如・多動症ーADHDーの診断・治療ガイドライン第4版.じほう.

十一元三(2014)子供と大人のメンタルヘルスがわかる本:精神と行動の異変を理解するためのポイント40.講談社.

 

 

(執筆者:大塚貞男(京都大学))

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