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OPNDRの研究紹介2:自閉スペクトラム症における目に見える表情模倣の障害

2020.6.22

投稿者:義村 さや香

研究背景

自閉スペクトラム症(ASD)は主な症状として社会性の障害を持ち、表情を介したコミュニケーションの障害が中核的な問題の一つとされています。ASD を持つ人には他者とのコミュニケーション中に生じる表情模倣の障害があるとされてきました。表情模倣とは、他者の表情を見たときに自発的に同じ表情を示すという現象です。顔面筋の活動を測定した研究から、ASD では外部から観察しにくい微細なレベルで表情模倣の頻度が低下していることが示されてきました。表情模倣にはそれによって親近性が増すなどコミュニケーションを円滑にする機能があることから、表情模倣の障害はASD の社会性の障害に影響していると考えられます。しかし、表情模倣がこの機能を果たすには、コミュニケーションしている相手に表情模倣が生じていることが見えることが必要です。本研究では、コミュニケーションの相手がASDを持つ人の表情模倣を目で見て捉えることができるか、また、表情模倣の障害がASD の社会性の障害に関係するかについて検討しました。

 

研究方法

本研究では、知的障害を持たないASD 群の成人15 名および定型発達群の成人15 名を対象として、他者の2種類の表情(怒り・幸福)(図1)を見ている間の表情反応を被験者からはわからないように録画し、目に見える表情模倣があるかどうかを評価しました。その後、表情を表出することそのものに問題がないか調べるため、見ている表情を意図的に模倣してもらい、指定された表情に応じた模倣ができているか評価しました。

図1.参加者が観察した表情

 

研究結果と考察

ASDを持つ人では定型発達者と同様に意図的であれば表情を模倣できるものの自発的な表情模倣の頻度が低下していることが示されました(図2)。さらに、目に見える表情模倣の頻度と症状の重症度との関係について分析したところ、表情模倣の頻度は社会性の障害と負の相関を示しました。これは、目に見える表情模倣が生じにくいという社会性の障害が強いことを意味しています。これらの結果から、ASD では目に見える表情模倣の頻度が減少し、表情模倣の機能を用いることができないことが社会性の障害の一因となっているという可能性が示唆されました。本研究は、ASD 群において表情模倣が他者から認識できるかというレベルで減少していること、その減少がASD 群の社会性の障害に関係していることを示しました。


図2.観察した表情に一致した表情模倣の頻度

 

今後の予定

定型発達者では、自発的な表情模倣によって他者の表情を理解しやすくなることが知られています。今後は、ASDを持つ人でも表情模倣が同様の機能を持っているのかについて検討する予定です。また、意図的に表情の真似をすることによって自発的な表情模倣の障害を補えるかどうかについても検討する予定です。これらの研究を進めることで、ASD の社会性の障害への効果的な介入方法の確立のために役立つ知見が得られると考えています。

 

参考

この研究は最先端・次世代研究開発支援プログラムの支援を受けました。

 

論文情報

Yoshimura, S., Sato, W., Uono, S., & Toichi, M. (2015). Impaired overt facial mimicry in response to dynamic facial expressions in high-functioning autism spectrum disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders, 45, 5, 1318-1328. [本文はこちら]

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